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バーガーキング、マック相手に “挑発” “おちょくり” 連打…専門家は「比較広告」広がる可能性を指摘【画像あり】

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.04.28 06:00 最終更新日:2024.04.28 06:00

バーガーキング、マック相手に “挑発” “おちょくり” 連打…専門家は「比較広告」広がる可能性を指摘【画像あり】

バーガーキング(写真・アフロ)

 

 ハンバーガーチェーン「バーガーキング」による攻撃的な広告手法が論議を呼んでいる。4月16日に大阪・難波にオープンした千日前店は、2023年10月末まで、大阪最古のマクドナルドが営業していた跡地に開店。

 

 そして、現在店頭には「あとは、お任せアレ。」というキャッチコピーとともに、マックのキャラクター、ドナルド・マクドナルドと思しきキャラクターからバトンを受け継ぐ写真を載せた大判ポスターを掲示している。

 

 

 そのボディコピーはこうだ。

 

「まだまだ未熟者ですが、この場所に刻まれた数々の思い出を大切にしながら、店内の美しさ、商品提供スピード、誰をもスマイルにする丁寧な接客。そのすべてを見習って、これからバーガー業界の盛り上げ役として突っ走っていきます」

 

 つまり、健闘を讃えつつも、マックにやんわり挑戦状を叩きつけているのだ。

 

 マックの全世界店舗数は約4万店。一方、ファンから親しみを込めて “バーキン” の愛称で呼ばれるバーガーキングは、マックに遅れること14年、1954年にフロリダ州マイアミで1号店がオープン。現在では世界100カ国以上に進出し、約1万9500店舗を展開している。

 

 バーキンは世界第2位とはいえ、マックにダブルスコアで負けているのだ。日本国内ではもっと存在感が少なく、約3000店のマックに比べ、今年5月末で226店舗とまだまだマイナーな存在だ。

 

 バーキンはもともと1993年に日本初上陸を果たしたが、以降は経営も転々とし、2001年には一度撤退を余儀なくされた。2007年に再上陸するも、2019年には大量閉店が話題になるほどだった。ところが、この3年で店舗は倍増、売上も4年連続前年比130%超と大好調。2028年末までに600店舗を目指すという。

 

 実は、6年前、運営元が香港の投資ファンドによるビーケージャパンホールディングスに変わり、そこから広告手法にも大きな変化が現われたのだ。

 

 2020年1月末をもって閉店した、2軒隣のマクドナルド秋葉原昭和通り店に向け、バーキンは「22年間たくさんのハッピーをありがとう」という見出しとともに、“先輩” をねぎらうメッセージを添えた広告を掲示。この文章の各行の頭文字だけ拾うと「私たちの勝チ」となり、大きな話題となった。千日前店のケースと似た、もって回った “挑発”だ。

 

 このようなおちょくりはその後も続き、2023年3月に渋谷センター街で掲出した、新商品「BigBet」の看板もSNSで評判に。これはマクドナルド渋谷センター街店の向かいのビルに掲げられ、道路からだと歪んで見えるが、マックの店舗側からだと写真が迫り出し、「正面から勝負!」のキャッチコピーがはっきり見える仕掛けとなっていた。

 

 日米の広告事情をよく知る、多摩美術大学の佐藤達郎教授によれば、本国アメリカではバーキンの姿勢はもっと過激だという。アメリカでは1980年代から、「“比較広告” と呼ばれる表現手法が盛んにおこなわれていた」と佐藤教授。

 

「もっとも有名なのが、ペプシによるコカ・コーラに対する広告でしょう。当初は味覚テストなどの比較表現で、日本でも展開されましたが、アメリカと違い商品名も実物も明かされなかった。

 

 これがだんだんエスカレートしていき、ラッパーのMC.ハマーが、ノリノリでライブ中にペプシの代わりにコーラを飲むと、急にゆったりバラードを歌い出すといったCMを記憶している方は多いと思います」

 

 歴史に残る「Pepsi Challenge」「The Choice of a New Generation」と呼ばれたシリーズ広告である。広告効果も手伝い、一時期はシェアの逆転も起きた。

 

 こうした二番手のトップへの挑戦表現がアメリカの広告には多い。佐藤氏が “挑戦広告” と命名したこの手法を、米バーキンも盛んに打つ。佐藤氏はいくつかの実例をあげる。

 

「2015年の国際平和デーに際し、『その日はバーガー戦争も休戦にし、共同で〈マックワッパー〉を売り出し、収益を慈善団体に寄付しよう』と、ニューヨーク・タイムズ等の一面広告でマクドナルドに呼びかけ、話題を集めたことがありました。

 

 2019年には、マックの店舗に近づくとプッシュ通知が届き、アプリに従って最寄りのバーガーキングに来店すれば、看板商品のワッパーを1セントで購入できる、“Whopper Detour(廻り道ワッパー)” というキャンペーンを張って大成功を収めました。

 

 2020年には “The Moldy Whopper(カビの生えたワッパー)” というCMを流し、防腐剤などを使っていないことをマック商品と対比して映像でアピールし、数々の世界的な広告賞を授与されました」

 

 万年2位だからこそできる挑戦だと言えよう。ある意味、巨大な競合のふんどしで相撲を取るのだ。そして、バーキンは世界各国でも、それぞれの国民性に合わせ、同様の挑戦広告を展開している。

 

 もっとも過激な企画は、2019年のブラジルでの “Burn that ad(あの広告を燃やせ!)” だろう。ワッパーを1個買うと、ARアプリがダウンロードでき、街中いたるところにあるマックの広告のビーフパティにレンズを向ければ、それが燃え上がって見え、ワッパーの焼き目などの特徴を主張できる仕掛けだ。さらに、無料でワッパー1個ももらえる。

 

 ただ、こんな過激表現は日本では景品表示法や不正競争防止法による規制のおかげで許されない。佐藤教授自身、広告代理店のクリエイティブ出身で、比較広告の制作を検討したことがあるという。

 

「各管轄省庁を回って確認もしましたが、そもそもクライアントやテレビ局が比較広告を望まない。競合をディスるのはよろしくないというわけです。日本人はなんでも一番が好きですから(笑)。

 

 ただし、明示的なチャレンジではなく、“よ~く見ればそうも読める” といった形で展開するのは許されるのでしょう。規制の問題を別にしても、消費者のメンタリティを考慮した、非常に “日本的な” 試みだと思います。

 

 現在、日立のような伝統的な日本企業が年功序列を廃し、専門性重視のジョブ型採用をしていくと宣言するぐらいですから、今後はチャレンジ精神がいっそう尊ばれる。となれば、日本でも挑戦広告が徐々に広まっていくかもしれません」

 

 なお、一連のこうした挑発広告に関し、ビーケージャパンホールディングスに取材を申し入れたが、「記事を読んだ読者からバーガーキングに対して批判的な意見が出てくる可能性がある」と断られてしまった。渋谷センター街店の外観にわざと落書きをし、《渋谷を守るスタッフ緊急募集!》と求人広告風のディスプレーを施した、人気アニメ『WIND BREAKER』とのコラボPRに批判が殺到したからか。

 

 ここでも攻めの広告姿勢を貫いたバーキンだが、《渋谷のバーガーキング、治安が完全に終わってた。こわい》などと実際の落書きと勘違いした声も多く寄せられ、しばらくおとなしくしておこう、というところなのかもしれない。

 

文・鈴木隆祐

( SmartFLASH )

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